モスクワ旅行記―観光編2
2009年 06月 07日
前日に1日モスクワを観光した私たちでしたが、観光ばかりしていてもしょうがないので、この日は初日の楽器返還で訪れた「グリンカ記念国立中央音楽文化博物館」をゆっくり見学しようと再度訪問しました。グリンカ音楽博物館は、ロシアの作曲家や世界の楽器を展示しており、楽器作りの私たちには興味深い内容です。
再度訪問したグリンカ音楽博物館。初日の曇り空とうって変わって、いい天気です。
晴天のもと、博物館をバックに再度記念撮影です。
グリンカ楽器博物館の内部です。ロシアゆかりの作曲家や楽器が展示されております。
博物館の学芸員が丁寧に説明してくれました。
美しい装飾が目をひくピアノやオルガンが並べられております。
珍しい、ジラフスタイルと呼ばれるピアノ。
チャイコフスキーさまの肖像画。
世界で初めて開発された電子楽器、レフ・テルミン博士自作のテルミンボックス。思いもかけずこんなところで出会えるとは!
ソ連で1930年代に開発されたANS型シンセサイザーとその横でたたずむ菊田さん。
3階の作曲家と鍵盤楽器の展示室を見終わって、さていよいよお目当ての2階の弦楽器展示室へと向かったところで、残念なことが発覚! なんと弦楽器展示室が先月から改装のため一時閉鎖されているとのことでした! ぶっちゃけて言えば、私たちのモスクワ訪問の目的は第一に楽器返還、第二にグリンカ博物館の弦楽器を見ることだったのですが、運悪く改装中とは・・・! 学芸員と交渉しても、展示物は倉庫に保管して封印されているので、見ることはできないと、そっけない返事。がっくりと肩を落とした私たちでした。(特に私!)
しょうがないので、グリンカ博物館付属の楽器修復工房を訪問しました。ここでは初日の楽器返還で検査官を務めたマエストロとそのお弟子さんが仕事をしておりました。突然訪問した私たちをいやな顔もせず丁寧に迎えてくれました。
修復した楽器を試し弾きするマエストロ。スイス航空の帽子がお気に入りのようです。
「グリンカ博物館の弦楽器展示室が改装中で見れなかった・・・」と、がっくり肩を落として話す私たちを哀れに思ったのか、マエストロとそのお弟子さんがコンクール実行委員本部「ゴスコンサート」に掛け合ってくれ、翌日にロシア国家財産の楽器の名器を特別に見せてくれることになりました! ラッキー!!
大満足の私たちは丁寧にお礼を言って、最後にマエストロ氏と記念撮影。
この日の午後は、コンクール委員会の特別招待の第2弾、モスクワ音楽院大ホールでのコンサートに招待されました。モスクワ音楽院大ホールはチャイコフスキーコンクール音楽部門が行われたメインホールです。ここで諏訪内晶子さんや川久保賜紀さんや神尾真由子さんが大健闘した舞台なんだな~と、感慨深いものがありました。
モスクワ音楽院大ホールの正面階段にて。
開演前のモスクワ音楽院大ホール。
ホール内には、著名作曲家の肖像が内部を飾ります。
ロシア交響楽団を率いるのは、指揮者のポランスキー。演目はチャイコフスキーのピアノ協奏曲第2番とラフマニノフの交響曲第2番。大迫力でした。
昨日の素朴な民族音楽とはうって変わって、大迫力のオーケストラに大満足の私と菊田さんでありました。
素敵なコンサートに大満足してモスクワの夜は更けていったのでした。明日は楽器がみれるぞ~!
さてさて、その翌日。いよいよ急遽決まったロシア国家財産の楽器の特別拝観です。一般には公開していないロシア国家財産の名器を特別の計らいで見せてもらえることになりました。
朝から私たちは緊張と期待で落ち着かない時間をすごしておりました。というのも、実際どんなところで楽器を見せてもらえるのかも予測できず、ここにきて自動小銃で撃ち殺される可能性もあるか!?(笑)と、どきどきしている私たちを車でつれていかれた先は、モスクワ郊外のロシア文化省管轄の国家財産が保管されている建物の中。
自動小銃を構えている警備員はいなかったものの(笑)、厳しいセキュリティチェックを何度か受け、迎え入れられた先は建物の奥の奥、金庫室のような分厚い扉の中。4畳半ほどの小さな室内の中には天井まで届く何段もある棚に百を超える楽器がケースに収められていて番号を振られて保管されておりました。
もちろんすべての楽器を見るわけにもいかず、楽器管理員の立会のもと、選りすぐりの名器を見せてもらいました。ストラディヴァリのヴァイオリン5台にヴィオラとチェロ、ガルネリ・デル・ジェス1台、アマティ3台、その他ガダニーニなど・・・。実際に手に持って見させていただきました! ソ連時代からロシアに眠る門外不出の珠玉の名器、まるで宝石を見ているようでした。
こんなに多くの名器を一度に見れる機会はクレモナでも珍しいですし、実際手にとって見れるのは一生でも一回きりだと思います。特にロシアの国家財産の名器はこれからも見る機会がないだろうと思います。目の奥に焼き付けた私たちでした。夢のような2時間もあっという間にすぎ、大満足の私たちは丁重にお礼を言ってロシア文化省の建物を後にしたのでした。
楽器管理担当官の話によると、ロシアの国家財産のストラディヴァリは全部で11台あり、今回見れた楽器以外はロシアの演奏家に貸し出されているとのこと。
そしてなんと私たちが今回納めたコンクール入賞楽器も、これらの名器と一緒にこの保管室で保管されるとのことです。自分たちの楽器がストラディヴァリやガルネリなどの名器が並ぶ保管室に納められるかと思うと、うれしいような恐れ多いような・・・。でも自分たちの楽器が納められる場所が見れたということも大きな収穫でした。
モスクワ滞在の最終日前日に思いもかけず舞い込んできた幸運に、今回のモスクワ滞在の一生忘れられない思い出となりました。
ちなみに今回の文化省施設内は写真撮影を厳重に禁止されておりましたので、写真なしです~、あしからず。
菊田さんには「金のミニカンナ」・・そんなものが。
グリンカ博物館での予想外のトラブルが、結果的にはとんでもラッキーな結果となったのですね。
文章から、その収蔵室をいっしょうけんめい想像いたしました。
高橋さんらの楽器がそれらと同じ珠玉となって、保存されていくのですね。親としても、嫁ぎ先を見届けられて安心されたのではないでしょうか。
今回のモスクワ滞在は充実した5日間になりました。どきどきしっぱなしで落ち着かない滞在でしたが、1か月過ぎた今になって、なんか懐かしい気持ちです。
きっと今まで部外者が入ったことがない楽器保管室だと思いますよ。貴重な体験ができたこと、そして自分たちの楽器の嫁ぎ先が実際見れたのはこれからも安心です。ストラディヴァリやガルネリたちといっしょに永久保存されて、私たちの楽器もさぞ幸せだと思います~。 ひょっとして緊張して落ち着かないかもしれませんが・・・。